生産者にとっても消費者にとっても、有機の食材が当たり前の世の中になって欲しい、これが私どものささやかな、しかし揺らぐことのない願いであり理念です。
2022年9月に惜しまれつつ他界した金子美登(よしのり)によって、ここ埼玉県小川町で始められた環境共生型の有機農業は、半世紀以上の歩みを経て後継者へ、またその教えを受けた者たちにより、それぞれの地で引き継がれています。
金子の造語で『小利大安』という言葉があります。
これは、経済的な利益は少なくとも、そこから得られる安心は大きいという意味で、彼の有機農業に対する一貫した姿勢を表しています。
ここで言う安心とは、農作物そのものは勿論のこと、それを食する人、育む土壌、そこを循環する水、そしてそれら環境に生きる多様な生物、微生物、細菌などあらゆる生きとし生けるもの全てを含んでいます。
今なお圃場では‘安心安全’という基準値内で、ふんだんに農薬や化学肥料が、食肉おいては、抗生物質や肥育ホルモン剤が使われ続けています。
確かに、かつての四大公害病のような露骨な健康被害は無くなったかのように見えます。
しかし、多種多様なアレルギー症状、癌罹患率の上昇、不妊治療者の増加、そしてうつ病、発達・学習障害などの多岐に渡る精神的な症状は、この‘安心安全’の基準と本当に無関係なのでしょうか。
これらの化学的な物質は微量であったとしても、土壌、水中、体内に蓄積してはいないのでしょうか。
また、‘安心安全’とされる化学物質は、無論単体一種類ではありません。
農薬工業会によると2018年時点で登録されている農薬数は4282件、そしてその有効成分数は590種類だそうです。
単純に、この590種類の掛け合わせだけでも348.100通りとなり、さらにこれが例え時間差を置いたとしても3種類、4種類と使われた場合の組み合わせなど無数に等しいのではないでしょうか。
例え微量であったとしても、複数の化学物質は結合により新たなる化学反応を起こし、全く別の化学物質に変容することは周知の事実です。
そして、その化学反応が行われる環境も土壌、水中、私たち人間を含めた生物たちの体内と多様且つ様々です。
‘安心安全’とされる実験室と同じ環境など、自然界には実在しないのです。
‘安心安全’を謳う者たちは、果たしてこの複合的な化学反応をも考慮に入れているのでしょうか。
私どもは、金子の教えを引き継いだ者たちによって栽培された米野菜をお届けします。
また加工食品、調味料等あっても安心安全に極力配慮した製品をお届けする所存です。
食は本来、命に直結する行為の筈です。
しかしながら食においては、余りにも経済性や利便性が優先され過ぎてはいないでしょうか。
小さな、ほんの小さな始まりかもしれませんが、私どもは一人でも多くの人々とこの同じ志を共有できればと願っております。